JAXAへの質問状


平成16年7月5日

宇宙航空開発研究機構

山之内秀一郎 理事長 殿

日本TRMMプロジェクトサイエンティスト
中澤哲夫

TRMM に関する質問状の送付について

これまで三度にわたり、古濱理事はじめ、貴機構の担当者から、 TRMM運用停止に関する状況と対応について、情報提供を受けましたが、 未だTRMMサイエンスチームとして理解できていない点や納得できていない点が 多々ありますので、添付いたします資料にありますように、 これらの疑問点について教えていただきたい点についてとりまとめました。 様々な要素が複雑に絡み合った問題ですので、口頭のご回答ではお互いに 誤解が生じる恐れがあります。 それを避けるため、できるだけ早い機会に文書にてご回答いただけますよう、 お願いいたします。
なお、サイエンスチームとしましては、 「気象庁や河川局などの現業利用も進んでおり、 国民の安全確保の点からも長期運用が必要である。 地球観測サミットなどでの国際公約も果たす必要がある。 JAXAとしてもMOUを変更して積極的にTRMMの長期運用のために 一翼を担っていく考えである」 というお立場にJAXAが立っていただけることを切に希望しております。


質問状
まず初めに、
1) JAXAの中の地球観測シナリオの中でのTRMMの位置づけについて教えてください。 あくまで研究・実証ミッションであるということでしょうか。
2) JAXAにとってサイエンスチームとは一体何なのか、 どのような権限を持たせていることになっているのか教えてください。

そこで、TRMM関連での質問に入ります。
(1) NASAが提案してきたTRMM衛星の運用停止に、JAXAが反対しない理由は何ですか? NASAとの協定(了解覚書、以下MOUと約す)には、JAXAが合意しないと、 TRMMの運用の終了はできないことになっています。

(2) MOUは、不変なものではなく変更できるものだと考えますが、 いかがでしょうか? MOUの第21条では、NASAとNASDAの合意で改訂できることになっています。 JAXAがMOUを変更しないことに拘る理由は何でしょうか?

(3) JAXAが NASAが提案したTRMM衛星の運用停止に合意する理由として、 もっとも大きな理由は分担を規定しているMOUを変更する合理的理由が ないからだとされていますが、 どのような理由であれば合理的理由となるのでしょうか?

(4) TRMMのMOUは過去にも改定されたことがあると聞いております。 改定はNASAとJAXAの双方の合意があれば可能なことになっており、 今回の場合、JAXAがTRMMで掲げられている共通の崇高なる目的を 日米で達するために協力の意志があれば、 MOUの改定は両者で合意可能なことであると考えられます。 今回必要となっている改定は、NASA側からの圧力による物ではなく、 JAXAから積極的に働きかけたものとも考えられるものであり、 悪しき前例となるとは考えられません。 なぜ悪しき前例となるとお考えなのでしょうか? そもそも、MOUの改定には両者の合意が必要とかかれており、 将来JAXAにとって無理な改定が要求された場合には合意しなければ 良いだけの話と考えられます。

(5) 6月8日のPI説明会で、古濱理事より、MOUは変更しない、 百歩譲って変更しても、お金がないとの説明を受けています。 しかし、努力すればJAXAならば、4年間に10億円、 1年間に2〜3億円を捻出できるのではないかと考えますが、 如何でしょうか? (データ中継衛星の提供の提案など予算的には相当かかると思われる 提案をされていることからも、資金難が主な原因ではないと考えております。)

(6) 先の第二回地球観測サミットにおいて、 人工衛星からの地球観測にわが国として貢献して行くことが述べられております。 河村文部科学大臣は、わが国が取り組む三つの重要な観測分野の一つに 気候変動・水循環変動を挙げています。 TRMMは、気候変動・水循環変動を観測するキーの衛星です。 TRMMの運用を継続し、地球観測サミットでわが国が国際的に公約したことを 実現するのは、JAXAの責務ではないでしょうか?

(7)気象庁はすでに昨年10月よりTRMMのデータを使った予報を実施していると 聞いております。 その意味では、TRMMのデータは非常に国民の安全にとっても重要な役割を 果たしているものと考えます。 TRMMの重要性について直接、気象庁長官にお聞き願えませんでしょうか。

(8) TRMMに搭載されている降雨レーダ(PR)は世界に先駆けてわが国が 開発した衛星用測器です。 本レーダを継続運用することは世界に対してわが国の技術的貢献を 大きくアピールするものと考えますがいかがでしょうか? さらに、TRMMには代替となる衛星がありません。 PRは他のどの衛星にも搭載されていません。 またPRとマイクロ波放射計、可視赤外放射計との同時観測を行っている衛星は もちろんありません。 このことは、TRMMが国際的に大きな貢献を行っている衛星である、 ということを意味すると考えますが、いかがでしょうか。

(9) 2001年8月にTRMM衛星の軌道を変更し長期間運用の方針をNASAもJAXAも 鮮明にされたと理解していますが、 この方針と今回の決定は明らかに矛盾していると考えられます。 どのように説明されるのでしょうか?

(10)GPMに予算を集中するためにTRMMを運用停止すると説明がありましたが、 GPMを成功させるためには、TRMMの観測継続が不可欠です。 GPMは、日米欧の3つの宇宙機関が協力して立ち上げてきているミッションであり、 遅れても必ず実現するミッションではないでしょうか。 現在しっかりとした観測を行っているTRMMで成果を得て、 その成果をGPMに引き継いでいくことがGPM成功の鍵であると思いますが、 いかがでしょうか。

(11) これまで、JAXAは、ADEOS, ADEOS-2など、 一機800億円もの大型衛星を、設計寿命の3〜5年に遙かに及ばない短期間で 事故により運用を停止してきました。 現在、センサとしては全く問題がなく、毎日有効な降雨データを とり続けているわが国唯一の現役の地球観測衛星の運用停止に同意しようと しているわけですが、これでは納税者である国民に対して 説明できないのではないでしょうか?

(12) 短命に終わったADEOS, ADEOS-2には、 NASAやフランスが多額の費用と年月をかけて開発してきたセンサが 搭載されていました。 ADEOS, ADEOS-2が短命に終わったことで、諸外国は、センサを無くすと共に、 代わりの新しい衛星をあげざるを得なくなるなど財政的な損害をうけています。 その意味で、地球観測の国際コミュニティにとってJAXAに対する不信感は 根強いものがあります。 TRMM延命に協力することで、国際的な評価を回復する絶好の機会となると 考えますが、いかがでしょうか?

(13) 今回、WCRP(世界気候研究計画)を初め、 国内外の17機関から出ているTRMM延命請願や日本の気象学会の呼びかけによる 請願署名をした人がインターネット上で、約2週間で約1000名もいます。 これらの声を無視して、TRMMの運用停止をJAXA単独で決定するのは おかしいのではないでしょうか? これらの声にどう対処されるおつもりでしょうか?

(14) TRMMはこれまで過去にない貴重な観測データを提供し、 地球環境の観測を通して地球環境保全に貢献してきていると考えております。 このような価値あるデータを提供している衛星をなぜ急に 運用停止されるのでしょうか? その価値を認めておられないのでしょうか?

(15) 地球環境の変動をとらえるためには、長期継続観測が何よりも重要です。 気候変動を研究するには最低限10年間のデータが必要であることは、 学界の常識です。 6年半のTRMMデータでも十分ではありません。 これらの研究の成果があって初めて、実利用への道が開かれて行くと考えます。 その意味からも長期観測の重要性は明らかです。 このあたりのご認識についてお聞かせください。

(16) 本年4月および6月の古濱理事とAsrar局長の会談では具体的に 何が話し合われたのでしょうか? TRMM延命のための対案を持って行くなどの交渉の努力はどれほど されたのでしょうか? また、会談での具体的やりとりを公表していただけないでしょうか。 (運用停止の方向にあるとのPIへの説明の後にわざわざ理事が自ら 渡米されたため、運用延長の交渉の余地があったものと期待していました。 運用停止の確認のためだけに会談がもたれたのでしょうか。)

(17) 今回のTRMM運用の打ち切りはあまりに突然の報告と思われますが、 JAXAは今までNASAと延命の可能性についてどのような 議論をしてきたのでしょうか? 延命のための合理的理由を考えるにあたり、 サイエンスチームなどに相談はありませんでしたが、 具体的にどのような延命の努力をされたのでしょうか?

(18) JAXAは、わが国のデータ中継衛星をTRMM衛星から地上にデータ伝送する 手段として、NASAのデータ中継衛星の代わりに用いることを NASAに提案したと聞いております。 これは、MOU遵守の姿勢から一歩踏み込み、MOUを拡大解釈し、 しかもわが国のデータ中継衛星を利用するための予算もあることを暗に 認めたことを意味するのではないですか?

(19) JAXAは、開発機関であるため、長期の衛星運用はできないとのことですが、 わが国の唯一の宇宙機関である以上、ロケット開発、衛星開発のみではなく、 国民にとって役立つビジョンとそのための長期ミッションを持つべきは ないでしょうか? TRMMは、地球環境保全という、国民にとって役立つビジョンを持った ミッションであり、その運用は停止すべきではないと思いますが、 いかがでしょうか?

繰り返しになりますが、以上の質問につきまして、 文書にてご回答いただけますよう、よろしくお願いいたします。


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